house in nishino

house in nishino 2015

大きな半屋外テラスが広げる可能性

建主ご夫婦のうち、奥様は花のアレンジメントを生業としています。自宅リビングの一角をアトリエとしていましたが、冬は室温により花へのダメージがあることや、水を大胆に使用できずに不便を感じていました。そこでアトリエ兼住居を新築するため札幌市内の住宅地に土地を購入しました。都市部からほど近いが山を背にしており自然豊かな場所です。三角形の異形敷地かつ崖地ということが理由なのか、一度も住宅が建ったことのない手付かずの土地でした。

敷地は4m程度の高低差があり、測定してみると部分的に平坦な部分がありましたが、それは小さく、そのうえとても鋭角な三角形でした。

多くの個室が要望されたがコストから逆算するとひとつひとつがとても小さくなりました。それらが異形であると使いづらいので尺寸グリットにのった整形で配置。また、平坦部分を最大限に生かしながら、基礎の掘削面積を極力少なくすることもコストカットに繋がるので、2階を迫り出して面積を確保することでフットプリントを小さくし、できるだけ平坦部分からはみ出さないように配置しました。

北海道の冬は厳しいが中間期は長くて湿度も少なく快適なので、それを存分に感じられる半屋外テラスを建物の真ん中に据えています。
2階の壁を斜めにして気積を大きくすることで、面積以上の広さを感じることができます。こうしてテラスは家型の外形をもつことになりました。

北海道建築は寒さとの戦いであり、高気密高断熱で環境を100%コントロールし四季を通じて快適に過ごす住宅が目指すべきスタンダードとなっています。この住宅も寝室やリビング、ダイニングなど生活に必要な最小限の部分はそれを目指しました。一方で、雨風は防ぐが断熱されていない大きな半屋外テラスが建物の中心を成し、周囲を囲むようにリビングやキッチン、ダイニングを配しました。アトリエは温度管理のほか、花の出入荷の便を考え玄関横に離れのように配置しました。

テラスは環境を少しだけコントロールした内部と外部の性質を併せもった空間で、そのテラスの機能は幅広いものとなりました。まず、住宅の入り口に位置しているので土間、あるいは風除室の機能をもちます。アトリエとは大開口で繋がっており、気候のよい時や繁忙期にはアトリエはテラスにまで拡張します。そしてフラワーアレンジメントの教室が行われることもあります。また、ダイニングキッチンとも大開口で繋がっているので、夏や中間期の生活はそこを飛び出てテラスにまで拡張され、リビング的性質をもちます。冬はサンルームとなり厳しい寒さの助けとなります。またそれぞれの居室とアトリエの間のバッファーとしての役割ももっています。
半屋外のテラスは居室と連続することで多様に変化し、居室の機能を拡張する手助けとなります。生活の幅を広げるきっかけとして、その可能性をこれからも追求していきたいと考えています。

Screenshot
用途専用住宅
所在地北海道札幌市
敷地面積172.93m2
建築面積70.18m2
延床面積106.22m2
設計髙木貴間建築設計事務所 髙木貴間
構造長谷川大輔構造計画 長谷川大輔
施工辻野建設工業
写真大瀬戸雄大